INSIDE NB

いま私がやりたいことが、いまの私に必要なこと

2017.02.24

やりたいことを貫いている、私の人生

「やりたいことを貫いてきている人生だ」と、早見あかりはわずかに微笑みながら、きっぱりと言った。我が身を振り返って、そう胸を張れる人はきっと多くない。人がつくった道を歩むのは、自分の人生じゃないと言う。 12歳のときスカウトで芸能界に入った彼女は、高校3年生で大きな決断をくだす。これまで活動してきたももいろクローバーを脱退して、女優としてのキャリアを積みたい。そのために大学には行かない。
「芸能界は、先のわからない世界です。何かあったときのために進学することも考えたけれど、いまやりたいのは女優の仕事だけ。そんなタイミングで、いつでも行ける大学にエネルギーを取られるのはいやだと感じました」 もし進学したら、4年間で卒業するために学業を優先してしまうだろう。そんな自分の性格も、痛いほどわかっていた。それまでもさまざまな判断を繰り返し、道をつくってきたけれど、最も覚悟をもってくだした選択はこのとき。人生の舵を大きく切った瞬間だった。

そんな決意をしてまで女優の道を選んだのは「達成感があるとかそういうことよりも、ただ本当に、楽しくてやっているだけ」と、まっすぐな瞳を向ける。
「だってこの仕事、意味が分からないじゃないですか。早見あかりとして普通に生きていたら、ほかの人の感情なんて知らないままだけど、自分以外の誰かになりきらなくちゃいけない。嘘を現実のようにすることが楽しいんです」 アイドルを辞めた理由は、自分が向かなかったからだと言う。周りに嘘をつきたくなかった。それでもいまは女優として、ひたすら嘘をついている。
「アイドルでいるためには、早見あかりとして生きていることに嘘をつかなくちゃいけなかった。でも、芝居は別の人格になることだから、嘘をつくけど自分じゃない。それがまた面白いんですよね」

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もちろん、アイドルだった時間もいまの彼女を支えている。
「私には度胸がある、って言い切れます。それはアイドルとして、予測不可能な出来事にたくさん向き合ってきたから。昔はなんでもかんでも完璧に準備をしていないと不安だったけれど、臨機応変にさまざまな場面を乗り越えてきたおかげで、変わったんです。丁寧に準備をしなくても、心構えさえちゃんとあれば大丈夫」
2016年には、舞台で初めての主演を務めている。死にそうなくらい怖かったけれど、幕が上がった瞬間にやるしかないと腹をくくった。これまでの選択や経験が、彼女にしっかりと寄り添い、力強い根拠となる。準備をしない準備が整った、ということなのだろう。

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プライベートの転機も、彼女にみずみずしい変化を与えている。高校を卒業した夏の終わりに、家を出た。初めての一人暮らしは、自分との向き合い方を大きく変えた。
「10代の頃は“一人で頑張らなくちゃ”と思い込んでいて、その重圧を家族にぶつけることもありました。でも、グループを辞めて一人暮らしを始めてから、スタンスが変わった。一人で頑張る必要もないし、できないことはきっと誰かがサポートしてくれる。ボロを出しても、みんな受け入れてくれると思えたんです」 たった一人で、ニュートラルになれる時間と場所ができた。自分と周りの距離感をうまくつかめるようになったからこそ、人を信じられるようになったのかもしれない。心がほぐれれば、人付き合いも深まる。几帳面で神経質だった彼女は、時間や状況に揉まれ、だんだんとおおらかに進化していく。
「とことん考えて取り組むのが私だったけれど、いまは、とにかく楽しければいい。人との関わり方も変わったし、なにより過度な準備をしなくなったから、いつもリラックスできるようになりました。何か落ち込むことがあっても、必要以上に構えないで済む。現場でピリピリすることもなくなって、いい循環が生まれていると思います」

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よく通る声で、意志ある言葉をはっきりと紡ぎながら、彼女は本当によく笑う。けらけらと小さな子どもが遊んでいるように。自分に合う生き方を身につけたら、人はこれほど天真爛漫になれるものなのだろうか。
最近は、これまで以上に直感が鋭くなってきたと言う。やりたいことはやりたいし、やりたくないことはやりたくない。自分にふさわしい判断は、いつだって、自分が一番知っている。