BETA PEOPLE

BETA PEOPLE vol.16 : TAICHI MUKAI

2017.02.01

<ニューバランス>が掲げるスローガン「ALWAYS IN BETA」。それを体現すべく、現在進行形で理想の自分へ向かい、進化し続けている人たちを紹介しよう。今回は、今もっとも注目すべきシンガーソングライター・向井太一が登場。昨年12月に行われた「BETA NIGHT」では、鳥肌が立つほどのソウルフルでダイナミックなステージを観せてくれた向井。現在24歳。これからの日本の音楽シーンに爪痕を残すであろう表現者だ。

マイク一本で勝負。一曲が終わるごとに、その姿からどんどん目が離せなくなる。まっすぐでソウルフルな歌声。観ている側の気持ちがアツくなるのは、発せられる熱量がハンパないからなのではないだろうか。筆者は、向井太一のライブを観たとき、久しぶりに今の時代に感謝をした。

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向井は幼少の頃から、ボビー・ブラウンやMCハマー、2パックやビギー・スモールなどのブラックミュージックが流れる家庭で育ち、気づけば大の音楽好きになっていたという。「子供の頃で一番思い出すのは、マキシー・プリーストの『ワイルド・ワールド』。両親がサーフィンをやっていて、僕にも楽しむことを優先させてくれる親でした」と、自由な感覚を良しとする家庭環境で育ったそうだ。そんな向井が高校進学のときに選んだのは、シンガーソングライターへの道だった。芸能コースのある高校へ通い、そこで様々なジャンルの人に出会ったことで、視野がさらに広がった。

「その頃はモータウンなんかの生音を聴いていたんですけど、坂本九さんや弘田美枝子さんなど、60年代後半の日本の歌謡曲も聴くようになって、生音の強い感じがすごくリンクしたんです。それから自分の好きな音楽をどんどん掘り下げていくうちに、日本語の歌が独特で面白いことに気づいたんです」。なかでも向井の胸を打ったのは、坂本九の代表曲「上を向いて歩こう」だった。「いまだに聴くとグッときて泣いてしまいそうになります。歌詞を聴いているととても前向きな歌なんですけど、あの時代はポジティブでないといけなかったんだろうなとか、でも根底にはヒリヒリした生々しい感情が詰まっているように感じるんです。歌詞って、その人が置かれている環境で聴こえ方が変わってくると思うんですけど、僕にはこの曲が、自分を奮い立たせるような曲に感じました」。こう思ったときに、こんな気持ちにさせるような曲を書きたいと強く思ったそうだ。

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1960年代。高度経済成長期に生まれた、坂本九の「上を向いて歩こう」。間違いなく時代を反映した名曲だけれど、そのような歌を向井は今の時代とどう向き合い、発信しようとしているのだろうか?「僕らの世代はネットが盛んで、何でも簡単に手に入れることができる。音楽に関して言えば、どんどん違うジャンルが出てきている世代だと思うんです。その中で僕は、自分をジャンルで括っていないんです。僕自身がいろいろな音楽を聴いてきたし、これからもどんどん聴く音も変わると思います。それを制限するのはもったいないし、今の時代に合っていない。だからボーダーを外してフリーな曲を作りたい。それを意識して曲を作っています」。

「BETA NIGHT」でのライブではクラブミュージックを意識したビートを取り入れ、ワンマイクで勝負。しかし、ほかのライブではアコースティックなピアノに変わったり、ジャズやファンクの音に変えてライブをする。強い芯を持ち、そのうえで自由な表現を行うことができるシンガーソングライターであること。向井から発せられる歌詞からもそれを感じることができる。「プロデューサーに関しては、自分自身が好きな人たちと作っています。ですが、2ND EPに関しては、ヤイエルやレーベルメイトのスターローさんなど、誰とやっているのかという音の意味合いも強調したかったので意識しました。ヤイエルが同世代なので、レコーディングをしているときはすごく楽しかったですね。僕はクラブミュージックのような無機質な音に対して、逆説をいく歌詞を持ってくるのが好きなんです。その違和感が、もっと広げていくというか……。それと、人間の生々しい部分を表現したいので、それを書くために一度グッと自分を沈めるんです。ポジティブでハッピーにというよりは、ネガティブだったり、悔しいとか怒りとか、そういうところからの反発が一番の原動力になると思っているんです。そこから湧くパワーを表現したいというか」。

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現在、向井は音楽を中心に多方面でも自身を表現している。2年近くやっているファッションサイトでのブログでは、ファッションだけでなくアートや食など、幅広いカルチャーを独自の目線で紹介をしており、多くのファンを獲得している。進化し続ける者として、常に心掛けていることは「面白いと思ったことには、いつもアンテナを張るようにしている。今の時代、視覚的な要素も大事だと思うので、ミュージックビデオとか自分が着るファッションとかも重要なことだと思っているんです。面白いな、良いなと思ったことにはまず触れてみて、そこから自分のフィルターを通して僕のものになればいいと思っています」。

この一年でさらなる自身の変化と成長に気づき始めたという向井。「コアなままでは終わりたくない……」そう語るアツい新世代の星は、オンもオフもなく自分の表現を探求しているのだ。

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〈ニューバランス MRL247 SPECIAL EDITION〉(非売品)
photo:Yoshiteru Aimono
text:Kana Yoshioka

向井太一 / シンガーソングライター

1992年生まれ。福岡出身。シンガーソングライター。両親の影響を受け、幼少の頃からブラックミュージックに慣れ親しむ。音楽学校を卒業した後、2010年に上京。ジャズやファンク系のバンドでボーカル活動を始め、2013年にソロで活動を開始。2015年よりファッション誌「Men’s FUDGE」のウェブサイトにてブログをスタート。2016年、インディーズで1st EP『POOL』をリリース。その後、TOY’S FACTORYの新レーベル「MIYA TERRACE」と契約を果たし、タワーレコード限定シングル「SLOW DOWN」をリリース。11月に2nd EP『24』をリリースして話題に。