BETA PEOPLE

BETA PEOPLE vol.17 : 田我流

2017.02.23

山梨県笛吹市一宮町。四方を山に囲まれた広い大地を見渡していると、なんだかホッとした気分になる。空に向かって大きく深呼吸。息を吐ききったところで目を開けると、橋の向こうから歩いてくる男の姿が見えた。歩くリズムからして、どこからどう見てもザ・ヒップホップ。生きる道で身体に付着した文化は、はがれ落ちることはないのだろう。ヒップホップアーティスト田我流は、今も尚(Still)絶賛脳内革命中だ。

民放放送ではなく、NHK衛星第二放送。両親の影響で、映画『タクシー・ドライバー』や『真夜中のカウボーイ』など、アメリカン・ニューシネマを何度も目にしていた幼少時代「映画の中で流れている曲って、覚えるじゃないですか。ちょっとしたトラウマなんですよ」と、初めて音楽を意識したのはその頃だった。そして、世間はメロコア全盛期の高校時代。バンドをやりつつも、出会ってしまったのがYOU THE ROCK★の「Hoo! Ei! Hoo! ’98」だった。「“なんとかなんだよ!”とか、そんな音楽それまで聴いたことがなかったからビビリました。“ドカン!”とはっきりしたメッセージがあって、そこにリズムが走っている。ハマっちゃたんですね」。BUDDHA BRANDのリリックで「わけわかんないけどかっこいい!」、DJ KENSEIのプレイで「これどういうこと!?」と、さらに衝撃を受けた田我流は高校を卒業後、アメリカに武者修行へ向かう。

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「ロマンですね、ロマン。ロマンを追いかけて渡米しました。ユティカっていうニューヨークとカナダの間にある町だったんですけど、実際に住んでみて思ったのは、こっちのストリートと向こうのストリートは全然違うということでした。学校へ行ったら、昨日まで話をしていた友達が亡くなっていたりとか。イカした生き方する人、どんどんダメになっていく人。強い人は強いし、弱い人はとことん弱い。幅が広いし、いろんなことがごちゃ混ぜになっていて、もう『フライデー』(※1995年公開のロサンゼルス / サウスセントラルを舞台にしたヒップホップ映画)を感じました」。毎日いろんなことが起きる、そんなアメリカ生活の中で覚えたことは「分かっている人に出会うこと」「いかに早く危険を察知して、そこから早く脱出するか」ということだったそうだ。

地元に再び戻ってきてからは、地元の仲間とともにヒップホップクルー・stillichimiyaのメンバーとして活動開始。ソロとしても活動をはじめ、山梨を拠点に全国へ足を運んでいる。取材をした際、次のアルバムを制作中とのことで、アーティストとして日々どんなことを考えて生活をしているのかを尋ねてみた。「バカかと思われるかもしれませんが、まずは世界平和。結局、最後まで人間は野蛮な生き物で、人間のポテンシャルには限界があるし、人類は不完全だと思うんです。問題とか分かっているのに“やれねー”みたいな。自然界のほうがよほど分かっている。結局、ここ(山梨)に住んでいるのも、自然が近くにあるからなんです」。

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釣りをライフワークとする田我流は、ほぼ毎日といっていいほど、時間があると釣りへ出掛けるという。「自然と向き合って、自分が考えていることの答え合わせをしているようなものですね。自然をフィルターに、自分を俯瞰して見るために自然に入るんです。俺の場合は論理を立てて、その仮説を釣りで使って、それが使えれば俺は自然とリンクできている。釣れないこともあるけど、それはそれでいい。不条理……世の中の根本は常にそこにあるし、自分ではどうにもならないものが存在していることを知るのも大事なんですよ」。人間界ではなく自然界から、得るのではなく逃すことから。逆転の発想から得た感覚を、音楽でアウトプットしていく。「普通の人はやらないだろうけど、俺はこのやり方を一番信じているんです」。ライフスタイルそのものが、田我流のクリエイティブに繋がっているのだ。

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「247」=24時間7日間。常に自分を高めるために行動していることは、自然との対話のほか、「気合い入れろ!」というキーワード。「ヒップホップ的に言えば、“シメってんじゃねえよ”ってことですね。たまに自分も先輩に言われると、ハッとするんですけど。“気合い入れろ!”“ かき消していけ!”って、生きるためには喝を入れる。背筋がピンとなる現場感が好きなんですよ。それですかね、自分をいつも回転させていくために重要なのは」。そして、それから自分の思っていることをラッパーとして言葉に吐き出していく。「俺は、自分が思い描いた未来を具現化するためにラップしているんです。それを聴いてサポートしてくれた人たちがいるから幸せになれる。それが俺の新しい(New)バランスってことですかね」。

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「今年はソロアルバムを制作したら、できたら旅に出かけたいですね」と、アジアを旅することを夢みている。ちなみに高校生の頃から履いていたニューバランスの良さを知ったのは、3年前に一人で東南アジアへ旅に出掛けたときだという。「996、998、1400が好きで履いていますけど、旅へ出たときに少し変わったデザインのものを履いていったんですよ。タイ、ラオスと1カ月くらい回ったんですけど、ニューバランスの威力はハンパなかったですね。かなり助けられました」。

ヒップホップアーティストとして生きる田我流の、究極のアンサーは「楽しければいい」。そして、揺れて流れ動くこの世界で人々に投げかける言葉を探し続けている。

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シューズ:
ニューバランス MRL247 Sport〉10,800円(ニューバランス ジャパン お客様相談室 TEL:0120-85-0997)
※すべて税抜きの価格となります

photo:Yoshiteru Aimono
text:Kana Yoshioka

田我流

1982年生まれ。山梨県出身。山梨県笛吹市一宮町を中心に活動するラッパー。幼なじみとともにヒップホップグループ・stillichimiyaのメンバーとしても活躍。2011年に公開された富田克也監督の映画『サウダーヂ』で主演を務め、2012年にリリースした2ndアルバム『B級映画のように2』で、音楽シーンにおいても注目を集める。バンドプロジェクト・田我流とカイザーソゼとしても活動。2015年に同名のアルバムをリリース。