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「247」7days DJ selection:DJ KENSEI

2017.05.10

DJ KENSEIに聞く、1週間音楽セレクト

「247」=24時間、7日間。人々の快適な足元をサポートするモデルとして、2017年に誕生した新ナンバー。すでに3タイプがリリースされ、抜群の履き心地の良さで話題を呼んでいます。そこで「247」のコンセプトにちなみ、快適な毎日を過ごす人たちに向け、1週間(7日間)の音楽を7人のDJにセレクトしてもらいました。本企画の最後を飾るのは、DJ歴30年を越えるベテランDJのKENSEIが登場。ジャンル問わず、縦横無人に良質な音楽を聴いてきた彼の選曲から、音を楽しむだけでなく、その土地の文化を知るなど必ず何か発見があるはずです。

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MONDAY

ROBERT GLASPER 『In My Element』(Album_2007)
BLUE NOTE
自分にとって音楽は、時間帯や場所、季節など、そのときの気分によって聴く印象が変わるんです。月曜日は、一週間の始まりとして自分への応援歌的な音を聴く人も多いと思うけど、自分にはあまりそういうところがないんですね。自分の場合、週末に地方でDJをしてウィークデイに帰宅することがあるんですが、地元のレコード店に立ち寄って、そこで出会った音源を聴きながら帰ることもあります。このアルバムに関しては、リリースされた当時に金沢の名店「EVERYDAY RECORDS」の店主に薦められて購入した後、帰りの新幹線の中で聴いて気持ちがホッと癒されたんです。ロバート・グラスパーは、今でこそ知られた存在だけど、個性的で独特なリズムやフレーズを聴かせてくれるピアニストであることから、個人的にこのアルバムがとても印象深く身体に残っています。一時期は車のデッキに入りっぱなしだったし、今ではリラックスする時や、何か作業を始める前などに聴くことが多いですね。

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TUESDAY

JAH WOBBLE 『I Could Have Been a Contender: Anthology』(3CD Box Set_2004)
Trojan Records
京都に「BATTERING RAM」という自分にとって思い入れのある特徴的なスペースがあるのですが、そこは反物の工場として使われていた場所で、日本ではあまり見かけないくらいのとても細長い空間なんです。そこで良くマスタリングやライブのリハーサルをしたり、宿泊させてもらったりしているのですが、そういう場所って、普通に日本で生活していてもなかなか出会えない。自分は幸運にもそのような場所で音楽を聴かせてもらったのですが、そこで聴くジャー・ウォブルのベストアルバムが素晴らしかったんです。一般的にはボーカルのアルバムを聴くことが多いと思うけど、これはベーシストのアルバム。もしもみんなの生活をバンドに例えるなら、誰しもがボーカルってわけではないと思います。ベースもいればドラムもいる。視点や聴き方を変えられれば、いろいろなことに気づけるということ。

03
WEDNESDAY

AZYMUTH 『Fenix』(Album_2016)
FAR OUT RECORDINGS
休みの日の感覚があまり自分にはないんですけど、水曜日あたりはゆっくりしたいので、このアルバムを選びました。アジムスは、昔から好きで、それこそ小学生の頃に姉が買っていた『明星』っていうアイドル雑誌についていた「ヤンソン(ヤングソングブック)」のレビューにも、アジムスのアルバム「テレコミュニケーション」のジャケットが載っていたくらい。ラジオでも良く流れていたし。鍵盤のホセ(・ロベルト・ベルトラミ)さんは最近亡くなってしまいましたが、70年代から活動している息の長いグループだなと思うし、若いアーティストとも積極的にコミットしていて、常にフレッシュで居続けている。それと『Fenix』に関しては、年齢とともに言葉で表現しにくい感覚や様々な感情に気づいたアルバムでした。いつも聴いてきているわけではないけど、ふとしたタイミングで聴きたいアーティストですね。

04
THURSDAY

安東ウメ子 『イウタ ウポポ』(Album『UPOPO SANKE』より_2011)
CHIKAR STUDIO
アイヌの音楽は、最近自分の周りにいるDJの間でよく話題になります。自分は東京出身ですが、DJでいろいろな土地へ行くことが多く、そこで様々な音楽を聴いていると、自然と日本の民族音楽や(民謡など)ルーツミュージックに反応してしまうんです。そんな中で安藤ウメ子さんのアルバムは、自分をフラットにしてくれるというか。聴いて高揚するわけではないけれど、ほど良いテンションで、ニュートラルな気持ちにさせてくれる。なんて言うか……自分のDNAが反応する感じ。トンコリというシンプルで原始的な楽器やホーミーという歌唱法を使ったグルーヴが良く、低音がしっかり効いた曲もある。すごく古い音楽でもなく、と言っても最新の音楽でもなく、タイムレスで普遍的な音なので聴く場所を選ばない。人間的にリセットできる、現代の処方箋のようなアルバムですね。

05
FRIDAY

DEXTER STORY 『Veggie Wondem Combo(Ras G African Space Program Remix)』(Album『Wondem Remixed』より_2016)
SOUNDWAY RECORDS
札幌で「Dublab」のイベントを開催したとき、一緒に過ごしたドラマー兼ビートメーカーのデクスター・ストーリーのリミックスアルバム。オリジナルアルバムはレコードでリリースされているけど、これは配信のみ。リリース形態は現代的だけど、好きなアーティストはすべてのメディアで聴いてみたくなりますね。元々「DEF JAM」というレーベルでインターンをやっていたという経歴もジャケからは想像できないし、そういう経歴の持ち主が、今はどんな音楽を作っているのかも興味深い。音もエチオピア音楽のフレイバーを感じられたり、リズムもJ.ディラ以降の現代的なグルーヴでとても新鮮。オリジナルなビートと新しい民族感、エレクトリックと生楽器の融合加減などが、機械と人間、人種のクロスオーバーをして現代社会を表現していているようで、心にダイレクトに響いてきます。それにも関わらず、さらっと聴けてしまう(笑)。一般的にあまり知られていなくても、自分が良いなと思う音源をたくさんプレイし、聴いた人に良い未来をイメージしてもらえたらと思っています。

06
SATURDAY

OH NO 『Magic Soul』(Album『Ultimate Breaks & Beats』より_2017)
STONES THROW/UBB ENTERPRISES
ヒップホップDJだったら誰もが知っている定番の「ULTIMATE BREAKS & BEATS」なんですけど、マッド・リブの弟、オー・ノーが再構築して、これまでのものとはまったく違う印象で聴かせてくれました。オー・ノーならではのオリジナルになっているし、バランス感覚を楽しみたいなと思う週末、自分の欲求に応えてくれる感じですね。元にあるものに対する斬新な解釈が、ベテランから若い人まで楽しませてくれる。迷いなく、積極的に過去を進化させていく姿勢を感じるので、気持ちが高揚しますね。    

07
SUNDAY

SUSSO 『Toroma』(Album『Keira』より_2017)
SOUNDWAY RECORDS       
西アフリカのマンディンカ族のフィールドレコーディングを元に制作された、スッソのデビューアルバム。民族感があると気持ちがほんわかするというか……。それでも最新のテクノロジーも使っているから、ほどよく洗練されていてただ単に民族的なだけではない。古い音楽を知ることもそうですが、現行の民族音楽を聴くことで、現代のニュースを捉えることができるから好きですね。インターネットがなかった時代、ヒップホップがその地域のニュースとして機能していたように、様々な地域で起こっていること、思想や文化がダイレクトに伝わってくる。今は南米の奥地からアジアの端っこまで情報が伝わる時代。聴いたことがない言語のリズムや楽器の音色、ジャケットを通じて感じられる温度や湿度、空気感も楽しめるので、データのみではなく、アーティストのパーソナルな部分にもっと興味を持ちたくなるんです。知識も増えるし、イマジネーションも広がっていきますから。

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―24時間7日間、進化するためにしていることは何ですか?

DJ KENSEI:なるべく自分らしくいられるようにしています。身の回りの環境や仕事現場のテンション、カセットやデータ、レコード、CDなどのメディア、それこそ聴いている音楽の音量から、聴くミキサーの種類や針、スピーカーなど、自分の感覚でいいと思える状況を作るように心掛けています。自分がDJをしているのは、生きる糧でもあるんです。人と繋がったり、何かを感じさせてもらったり。DJを聴きにきてくれた人を喜ばせるという意味でも、自分がこれまでやってきたすべての経験から、ベストなやり方をその都度選択し、プレイしていければいいなと思っています。

photo:Atsushi Matsuoka
text:Kana Yoshioka


DJ KENSEI

80年代半ばよりDJをスタート。リミキサー、プロデューサー、レコーディングアーティストとしてこれまでに、INDOPEPSYCHICHS、KEMURI PRODUCTIONS、FINAL DROP、NUDE JAZZ、COFFEE & CIGARETTES BAND、OMA‘N’SEI(鈴木勲&DJ KENSEI)などの名義で活動。その時代において日本国内はもちろんのこと、世界各地に足を運んではDJやライブを行い、数々の作品もリリース。2015年から2016年にかけて、約半年間に渡りタイ~ラオス~インドの旅を経験。その旅の記録をビートに落とし込んだアルバム『IS PAAR』を制作。

http://djkensei.com/